間葉系幹細胞「MSC」を用いた細胞治療製品や再生医療システムの構築に取り組む広島大学発バイオベンチャー
株式会社ツーセル
画像取得先: http://www.twocells.com/
会社概要・事業内容
会社概要
2000年~2003年のJSTプレベンチャー事業「骨・軟骨組織の再生療法チーム」を基盤とし て、2003年に起業した広島大学発のバイオベンチャー企業。再生医療の普及を目指し、体性幹細胞の一種であるMSCをターゲットとし、MSCを用いた細胞治療製品と、MSC周辺の培養技術や再生医療システムの構築に取り組んでいる。
MSCとは
MSC(間葉系幹細胞;mesenchymal stem cell)は成体幹細胞の一つで、人の骨髄、脂肪、臍帯、滑膜(関節の周囲にある組織)などに含まれている。また、骨、軟骨、腱、脂肪、神経などへ分化する能力を持つ。この能力のため、MSCの移植によって治療できる病気の数や患者の数はとても多いのではないかと期待されている。
MSCは成人の体の中に存在する幹細胞であるため、胚を使用する胚性幹細胞(ES細胞)に比べ生命倫理上のハードルが低いというメリットがある。また、ES細胞やiPS細胞に比べて癌化リスクが低いため、安全性が高いというメリットもある。
しかし、MSCは骨髄の細胞の中に1万~10万個に1個というわずかな割合しか存在せず、さらに加齢と共に減少していく。そのため、移植に必要な量のMSCを取り出すためには、大量の骨髄液の採取が必要だった。また、MSCの増殖能や多分化能は、培養中に低下しやすく、従来のヒト血清を用いた培養法では治療に必要な細胞数の確保が困難であった。そこで、当社は、広島大学 加藤教授(ツーセル取締役)との共同研究により、MSCの分化能を維持したまま増殖能を飛躍的に上げる培養方法(間葉系幹細胞用無血清培地STK® シリーズの使用)を開発。このように、当社ではMSCを用いた再生医療の実現および普及を目指して、様々な研究開発を続けている。
事業内容
- 医療用の遺伝子と細胞、医薬品、診断薬、試薬、医療材料の研究開発、製造および販売
- 医療機器、医療用具の研究開発、製造および販売
- 遺伝子と細胞の診断法、治療法、培養法に関する研究開発、装置の製造および販売
- 再生医療に関するコンピュータシステムの開発および販売
病院型再生医療事業
高品質で、かつ、医師や医療機関による技量の差がない再生医療を先進医療として実施するための技術の確立を目指し、病院で再生医療を実施することを可能にするためのシステム、ノウハウ、技術の開発、提供、販売を実施。
具体的には「gMSC® 」、「MSC用無血清培地STK® シリーズ」、「幹細胞自動培養装置ゆりかご」、「安全性検査システム」、「MSCを利用した病院型再生医療システム」などを開発し、これらの商品・技術・ノウハウを研究用として医療機関・研究機関への提供事業を展開している。
セントラル型再生医療事業
病院型再生医療の技術を基に、個々の病院で実施する培養作業を特定の生産場所に集中させ、薬事法上の承認を受けた製品として開発し、細胞培養設備をもたない医療機関でも再生医療の実施を可能とする普及型の治療法。このことにより患者一人あたりのコストを下げることと、対象患者と対象病院を約1,000倍に増加できると考えている。
知的財産事業
当社の運営する研究会(幹細胞研究会、AdvancedAnti-Aging研究会)活動や展示会を足がかりにして、シーズの独自性を提示し、将来性を予測した事業プランを企業に提案。商談がまとまった後には、ライセンシング企業と共に、数年間の研究開発を基にして商品化を行う。商品化後は製品の販売収入から一定のロイヤリティを獲得。これまでに、無血清培地STK® シリーズやBDNFを用いた歯周病治療用製品、MSCによる軟骨再生材TECなどで成果を得ている。
この他にもライセンシング先を選定中の知的財産も複数所有。また、研究会活動や展示会、学会参加から新たなシーズの掘り起こしを図っている。
自動培養装置事業
通常、手作業で行われる組織培養は実験者の技術熟練度によって細胞の品質に差が生じてしまうほか、それぞれの工程ごとに外部からの雑菌汚染などのリスクが発生する。このような問題を解決するために、無菌的に細胞を培養できる自動培養装置のニーズが高まっている。当社では、創業以来㈱丸菱バイオエンジと共同でこの問題に挑戦し続け、幹細胞自動培養装置「ゆりかご」を開発。この「ゆりかご」を、再生医療や幹細胞の研究・開発を行なっている機関に研究用として販売すると共に、その機関の研究員にMSCを安全・確実に超増幅させる技術研修を実施。「ゆりかご」は医療機器の認証取得を目標としている。
経営者プロフィール
代表取締役社長 辻紘一郎
学位 : 農学博士(東京大学)
昭和16年 大阪府大阪市生まれ
昭和39年信州大学農学部卒業。同年、中外製薬株式会社入社。同社にて、開発研究所実験動物センター長・開発研究所安全性センター長・メディカル事業部 部長に従事。
平成13年、中外製薬株式会社退職。同年 科学技術振興機構(JST)プレ・ベンチャー事業「骨・軟骨の再生療法チーム」サブリーダーとなる。
平成15年4月、株式会社ツーセル起業、代表取締役社長に就任(上記サブリーダーと兼任)。同年7月、科学技術振興機構(JST)プレ・ベンチャー事業終了。株式会社ツーセル代表取締役社長に専任。現在に至る
取締役(研究開発担当) 加藤幸夫
学位 : 歯学博士(大阪大学)
研究 : 軟骨細胞の分化・間葉系幹細胞の培養法・成長因子作用
昭和23年 大阪府大阪市生まれ
昭和48年3月 大阪大学歯学部 卒業
昭和52年3月 大阪大学大学院歯学研究科 修了
平成2年7月 大阪大学歯学部 助教授
平成3年7月 広島大学歯学部 教授
平成6年 日本軟骨代謝学会 会長
平成12年 日本骨代謝学会 会長
平成12年10月 科学技術振興機構(JST)プレ・ベンチャー事業「骨・軟骨の再生療法チーム」 チームリーダー
平成16年12月 当社非常勤取締役
平成25年4月 広島大学名誉教授の称号授与
平成27年4月 当社常勤取締役 現在に至る
(同社Webサイトを基に当社編集)