通常の約1000倍の薬効性!高純度な間葉系幹細胞「REC」の培養技術を確立。高効果の再生医療の早期実現めざす
PuREC株式会社
画像取得先: http://www.purec.jp/
会社概要・事業内容
会社概要
2016年設立の島根大学発のバイオベンチャー。
間葉系幹細胞(MSC)が本来持つはずの細胞機能である増殖能と分化能と細胞の均一性や遊走能を活かした安全かつ効果的な幹細胞治療に結びつけることを目指している。
通常の間葉系幹細胞(MSC)と比べて約1000倍の薬効性(増殖能と分化能)を持つ高純度な間葉系幹細胞「REC」の培養技術を確立。より治療効果の高い再生医療の早期実現を目指す。
間葉系幹細胞治療の現状と問題点
一般的に間葉系幹細胞は、骨髄単核細胞を培養皿上に播種し、2~3週間培養後に出現する繊維芽細胞様のコロニー形成細胞(CFU-F)を回収するという方法で得られるが、この方法で得た付着細胞集団は分化能を持たない夾雑細胞の混入が避けられず、細胞品質を一定に保つことが困難である上に、培養中に骨髄内にいる時には備えていた遊走性、すなわち体内を循環する能力を失っているために投与方法が限定される、など様々な問題を含んでいる。
当社では、間葉系幹細胞が本来持つ細胞機能を失わせずに細胞を分離する手順を確立しており、この手法で得た品質の良い間葉系幹細胞を基礎・臨床研究用途に提供することを目的として設立された。
2019年6月には、総額5.8 億円の第三者割当増資を実施。
テクノロジー
超高純度間葉系幹細胞「REC」
研究責任者の松崎氏らは文部科学省・再生医療の実現化プロジェクトを通じてLNGFR (CD271) Thy1 (CD90)の2種の抗体を用いることで極めて効率よくヒトMSCを選別することができることを明らかにし、骨髄・末梢血・胎盤絨毛膜・歯髄からセルソータを用いて超高純度なヒト間葉系幹細胞(REC)を分離する技術を開発した。
RECは従来方で分離した間葉系幹細胞と比較し、A) 均一な細胞集団である、B)細胞老化を示していない、C) 細胞の大部分が増殖期にある、D) 高い分化能(特に脂肪分化能)を示す、E) 遊走性を示すなど、これまで問題となっている点をすべてクリアした高品質かつ高純度なヒトMSCと言える(Mabuchi et al. Stem Cell Reports 2013)。
<間葉系幹細胞(MSC)の機能と治療効果>
治療法がない、生まれつきの骨や軟骨をうまく作ることができない病気に対して、MSC移植は有効な治療となることが期待されている。
- 骨・軟骨・脂肪の再生:骨軟骨形成不全・乳房再建など
- 免疫調節:GVHD・クローン病・多発性硬化症など
- 傷を治す:脳卒中・心筋梗塞・肝硬変など
予定されている製品
高純度な間葉系幹細胞
当社独自に開発した細胞分離技術を用いて精製した高純度の間葉系幹細胞を凍結バイアルに封入し、研究用途の間葉系幹細胞製品として販売。
高純度間葉系幹細胞の分離受託サービス
移植医療への適合を視野に入れ、細胞性能が保証され、GMPに準拠したレベルの高純度な幹細胞を安定的に提供する体制を整備し、臨床用高純度MSC分離システムを構築し、臨床施設への細胞分離・培養受託サービスを提供。
間葉系幹細胞分離用・評価用試薬
高純度間葉系幹細胞に特化した染色性を示すモノクローナル抗体をナノ磁気微粒子と結合させることによって、間葉系幹細胞分離用試薬として提供。また分離した間葉系幹細胞の品質を検定するための細胞評価用の試薬として、蛍光物質結合抗体、細胞染色用試薬を提供。
細胞培養用試薬
間葉系幹細胞を医療へ応用する際、自己増殖能と分化能を有するには安定的な培養環境が必要となるため、培養増幅に最適化された培養用試薬を提供する。
間葉系幹細胞移植医療は、すでに臨床応用はされているものの、既存の手法で分離された細胞は幹細胞としてはわずか0.1-1%が含まれているにすぎず、純度に課題が残る。再生医療の市場は「間葉系幹細胞関連の国内再生医療市場予測((株)矢野経済研究所:2004 年度)」によると、2010 年に112,000 件、2015 年に218,720 件と予想されている。今後、先進諸国の高齢化が進むとともに、さらに患者数が増え続けるものと考えられる。また、米国では再生医療関連の市場は2020 年には6,000億円に成長すると推定されており、高純度間葉系幹細胞を用いた再生医療への社会的貢献、社会経済への効果は大きいものと予想される。
ヒトMSCはLonza社やStem Cell Technology社など海外企業数社より販売されているが、そのほぼ全てが既存の骨髄単核細胞を培養し2週間後に回収した従来通りの細胞集団である。このため、商用的に流通している培養MSCはロットによって分化能や増殖能に大きな差が見られ、バイオマテリアル等の材料として、あるいは臨床応用に供する上で再現性即ち安全性を確保することが困難であることが大きな問題となっている。
「REC」と他社市販細胞を比較したところ、いずれのメーカーの細胞においても、細胞増殖の速さや分化能に違いが認められた。従って高品質な製品を安定して供給できれば、現在凍結MSCを利用している研究者や企業に広く利用されると予想できる。
沿革
- 2016年1月 会社登記・島根大学発ベンチャー認定
- 2016年4月 本格始動
- 2017年11月 AMED橋渡し研究戦略的推進プログラム(シーズB)採択
- 2018年8月 NEDO優れたAIベンチャー企業コンテストグランプリ
経営者プロフィール
代表取締役社長 小林祥泰
(同社Webサイトを基に当社編集)