重さ100kg以下の超小型人工衛星を設計・開発。数々の衛星プロジェクト実績を誇る世界にも類を見ないベンチャー
株式会社アクセルスペース
画像取得先: https://www.axelspace.com/
会社概要・事業内容
会社概要
重さ100kg以下の超小型人工衛星を活用した宇宙ビジネスを展開するベンチャー企業。東京大学・東京工業大学で生まれた超小型衛星技術を原点に、2008年の創業以来、世界初の民間商用超小型衛星を含む5つの実用衛星開発・運用を通して性能・信頼性の向上に取り組んでいる。
大学発の独自技術をゼロから発展させてきたため、当社の衛星は世界的に見ても圧倒的なコスト競争力を有している。従来、莫大なコストと時間がかかることから、宇宙開発は国家主導の重厚長大産業であり、民間が行うのは夢物語でしかなかったが、同社はまさに今、超小型衛星を使って大きく変えようとしている。
超小型衛星の歴史は、創業メンバー達が2003年に世界で初めて打ち上げた、大きさ10cm立方、重さたった1kgの手のひら衛星「CubeSat(キューブサット)」から始まった。この10年間で超小型衛星は確実な進化を遂げ、そのミッション(機能目的)を選択集中最適化することで大型衛星に負けないミッションを短期で低コストで遂行可能であり、実用化のステージに進んでいる。
当社では、単に衛星を開発販売するだけに留まらず、超小型衛星、そして宇宙というフィールドを新たに利用する顧客に対して、どのような問題が発生し、どのように解決していくのかを一緒に考えて、最適なシステムを提案する。そのような意味で、超小型衛星を中心として、最適システム提案設計製造打ち上げ運用という一連の流れを提供する「宇宙ソリューションプロバイダー」となるべく事業を進めている。
当社の超小型衛星の開発手法は、従来の大型衛星を小型化するという方法ではなく、低コスト化短期開発を実現する超小型衛星ならでは開発手法を常に考えながら開発を進めているため、都内のオフィス内にクルーンルームを設置し、PC上の設計から始まり、実際に組み上げまで一貫して行われる。大型衛星が従来行ってきた各種環境試験(宇宙空間で人工衛星が正常に動作するかを、地上の試験設備を使って模擬し動作確認を行う試験)を全て行うのではなく、試験内容と手法を一度0から見直し、本当に必要な項目のみを選択して実施していることも、その一例である。また、PCや最新のスマートフォンなどに代表される最新の電子デバイスやソフトウェア手法などを積極的に採用することで、超小型衛星でも大型衛星に引けを取らないミッションを遂行できるように設計開発をしている。
事業内容
- 超小型衛星等を活用したソリューションの提案
- 超小型衛星及び関連コンポーネントの設計及び製造
- 超小型衛星の打ち上げアレンジメント及び運用支援・受託
- 超小型衛星が取得したデータに関する事業
超小型衛星プロジェクト
「RAPIS-1」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2019年1月18日、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所よりイプシロンロケット4号機にて打ち上げた「革新的衛星技術実証1号機」のうち、部品・機器の実証を行う小型実証衛星1号機(RAPIS-1: RAPid Innovative payload demonstration Satellite 1」)の設計・製造および運用を担当。2019年3月31日に軌道上における搭載機器のチェックアウトが完了したことから初期運用フェーズを終了。搭載している7つの実証テーマの実験を順次進めていく定常運用フェーズに移行。
「GRUS-1」
当社開発の次世代型超小型地球観測(リモートセンシング)衛星。100kg級の超小型でありながら、地上分解能2.5mの地球観測が可能。2018年に最初の衛星を打ち上げ、その後さらに多数の衛星を軌道に投入し地球の様子を高頻度に観測することが可能になる。
2018年12月27日、ソユーズロケット(Soyuz-2)にて打ち上げ。
「WNISAT-1R(WNISAT-1 Revised)」
北極海域の海氷の観測を主な目的とした質量43kgの超小型衛星。2013年打ち上げの「WNISAT-1」で獲得した技術を継承・発展させ、当社とウェザーニューズの共同で開発された。WNISAT-1Rは宇宙から以下の3つのミッションを行う。
- 海氷・台風などのカメラによる光学観測ミッション
- GPS等の測位衛星の反射波を利用して地球表面の状態を観測するGNSS-R (Global Navigation Satellite System – Reflectometry) ミッション
- 将来の超小型衛星のデータ量増大に向けた光通信の基礎技術実証ミッション
本衛星は2014年に打ち上げられた「ほどよし1号機」のバス技術をベースに新規開発したミッション機器を搭載することで、WNISAT-1を大きく上回る観測性能および衛星の基本性能を達成しながらも、短期開発によりコストを抑えることに成功。
2017年7月14日ソユーズロケットにて打ち上げ。
「Hodoyoshi-1」
地球観測(リモートセンシング)を目的とした1辺約50cmの立方体形状をした質量60kgの超小型衛星。リアクションホイール、スターセンサ、MEMSジャイロ、GPS受信機などが搭載されており高度な3軸姿勢制御を行うほか、新規開発された過酸化水素水を推進剤とする推進装置による軌道制御の実証も行う。また、地上分解能6.7m、観測幅約28kmの画像を取得できる光学センサが搭載され、高度500kmの太陽同期軌道から地球を観測。従来、このような分解能と観測幅の地球観測には150kg以上の衛星が使われてきたが、本衛星では60kg以下の質量で同等の機能を実現する。
本衛星で取得することができる地上分解能6.7mの衛星画像は、農業、林業、水産業、地図作成、GIS、災害監視等を含む幅広い用途での利用が期待されている。
2014年11月6日、ドニエプルロケットにて打ち上げ。
「WNISAT-1」
世界初、民間が所有する商用超小型衛星。
後継機である「WNISAT-1R」と同様、北極海域の海氷の観測を目的とした質量10kgの超小型衛星。青色、緑色、赤色の可視光バンドと近赤外光バンドのカメラ、および温室効果ガスの濃度変化を調べるためのレーザーを搭載。
WNISAT-1におけるカメラミッション・レーザーミッションの運用についてはすでに終了し、現在は「航空機の北極航路運行支援サービスに向けた太陽活動の影響による磁場変動観測ミッション」を中心に運用が行われている。これは、衛星搭載の磁気センサにより極域の磁場変動をとらえ、気象等の情報と合わせることで、航空機の効率的で安全な飛行のためのサービス向上に役立てられる。
2013年11月21日、ドニエプルロケットにて打ち上げ。
新時代の地球観測インフラ事業
「AxelGlobe(アクセルグローブ)」
数十機の超小型衛星群によって構成される次世代の地球観測プラットフォーム。これにより1日1回、地球上の全陸地の約半分を撮影することが可能となり、世界のあらゆる地域の観測を毎日という高い頻度で実現する。
2018年に最初の衛星を打ち上げ、その後衛星数を増加。完成は2022年を予定。
2019年5月31日にサービスを開始。
概要:地球観測用超小型衛星「GRUS」の撮影データ提供
沿革
- 2008年8月 株式会社アクセルスペース設立
- 2008年8月 株式会社ウェザーニューズと超小型衛星WNISAT-1の製作に係る契約締結
- 2011年3月 本店所在地及び事業所を東京都千代田区神田小川町に移転
- 2013年11月 世界初の民間商用超小型衛星WNISAT-1を打ち上げ
- 2014年3月 シードラウンドにおいて総額3,000万円を調達
- 2014年5月 ウェザーニューズ向け超小型衛星WNISAT-1Rプロジェクト開始を発表
- 2014年11月 ビジネス実証用超小型衛星ほどよし1号機を打ち上げ
- 2015年9月・11月 シリーズAラウンドにおいて総額約19億円を調達。AxelGlobe計画:超小型衛星群による地球観測画像データ事業への参入を表明
- 2016年8月 宇宙航空研究開発機構(JAXA)との革新的衛星技術実証プログラム小型実証衛星1号機の製作に係る契約締結を発表
- 2017年7月 ウェザーニューズ向け超小型衛星WNISAT-1Rを打ち上げ
- 2018年12月 シリーズBラウンドにおいて総額約25.8億円を調達
- 2018年12月 AxelGlobe向け自社衛星GRUS初号機(GRUS-1A)を打ち上げ
- 2019年1月 宇宙航空研究開発機構(JAXA)向け小型衛星RAPIS-1を打ち上げ
- 2019年3月 福井県民衛星技術研究組合との福井県民衛星の製造・打ち上げに係る契約締結を発表
経営者プロフィール
代表取締役最高経営責任者(CEO) 中村友哉
1979年、三重県生まれ。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。在学中、3機の超小型衛星の開発に携わった。卒業後、同専攻での特任研究員を経て2008年にアクセルスペースを設立、代表取締役に就任。
(同社Webサイト、同社Wantedlyおよび同社PR TIMES掲載情報を基に当社編集)