独自のリザーバコンピューティング技術「Qore(コア)」の開発に成功。少量データ×リアルタイム学習を可能に
株式会社QuantumCore
画像取得先: https://www.qcore.co.jp/
会社概要・事業内容
会社概要
「Qore(コア)」をベースとしたAPIならびにエッジ機能の開発・提供を行うベンチャー。
これまでディープラーニングでは活用しきれなかったデータや、実現できなかったニーズに対し、高精度・パラメータチューニング不要・リアルタイム学習・安価といった特長を備えた「Qore」を通じて、解決策を提示する。
当社は独自のリザーバコンピューティング技術「Qore(コア)※国際特許化中)」を開発することに成功。今後「Qore」の社会実装を目指す。
既に10社を超える企業との実証実験が進んでおり、従来型のAI技術では実現できなかった「少量データ×リアルタイム学習」が可能なAIソリューションを、特にビッグデータが効かない分野(ヘルスケア、機械制御、感情分析、音声・話者認識、価格予想、等)において構築し、従来型AIが抱えてきたスケーラビリティ問題を解決する。
2019年7月には、JAFCO及びIDATEN Venturesを引受先とする約1.6億円の第三者割当増資(シリーズA)を実施。
事業内容
- リザーバコンピューティングを活用した次世代時系列処理基盤技術の開発、提供と導入支援。
リザーバコンピューティングとは
レーザーの波長や波動く水面など、ダイナミクス(ノイズソース)を持つさまざまな物質を利用したコンピューティングのことで、これを活用したリカレントニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)が、最近新たな機械学習方式として注目されている。入力層、中間層(リザーバ層)、出力層(リードアウトニューロン層)の3層で構成される教師あり学習である。
この方式では、ディープラーニングと違い、中間層を溜め池(Reservoir:リザーバ)にして計算を回すことで特徴抽出を行う。そのためディープラーニングで必要だった特徴抽出機能を学習により強化する必要がなく、学習時の中間層の重み更新が不要となる特徴を有しており、学習時の計算に必要なデータ量や計算力を著しく節約することが可能。
なお、溜め池にはダイナミクス(ノイズソース)を持つものであれば様々なものが利用でき、現在はロボットやタコの身体をノイズソースとして計算する仕組みが探求されている。このように狭い意味では人工の神経回路を使って様々なノイズソースを用意し、そこから適宜情報を取り出して加算し計算する新しい人工の脳型コンピュータである。
当社のテクノロジーについて
「Qore(コア)」シリーズ
リザーバコンピューティングの特長は上述の通りだが、ディープラーニングに比べて精度を出しにくいという課題を有していた。その技術的な課題を当社独自の技術(特許進行中)で解消することに成功、ディープラーニング(Long short-term memory:LSTM)の性能を圧倒的に超える精度、コスト、スピードを実現する多変量時系列処理(Recurrent Neural Network:RNN)ソリューション「Qore(コア)」シリーズの開発に成功。
「Qore」の特長は「データ波形を効率的に捉えることで、少ないデータ量でLSTMを超える分類ができる」ことにあり、個体差、環境差、時間差等の影響が大きい領域(=ルールベースの推論モデルが通用しにくい領域)において、特に力を発揮する。
例えば異常検知等においては、推論モデルを構築するためにデータを採取してみたものの、正常データこそ大量に得られるが異常データをほとんど得ることができず、LSTMではそこから有効な異常検知の推論モデルを確立することが難しいといった問題が考えられる。そのようなケースでも「Qore」を活用することで少ない異常データから有効な推論モデルをリアルタイムに導くことができる。しかも、従来ディープラーニングで問題であった複雑なパラメータチューニングも不要。
プロダクト
「WebQore(ウェブコア)」
「Qore」を誰でもオンライン上で使うことができるようにした専用API。
LSTMに比べて高い精度と圧倒的な速さを実現する。「Web Qore」を使えば、学習用データをCSVファイル形式にしてアップロードするだけで、簡単に高精度な時系列処理APIを瞬時に生成できる。高価なGPUは不要なため、安価に構築可能。
例えば、9人の音声ファイルから正しく話者分類するタスクを従来型のLSTMと「Web Qore」で行ってみた結果、「Web Qore」は98.4%の精度(LSTMは92.4%)を、わずか1.8秒の学習(LSTMは120.5秒を要した)で実現。従来型LSTMより高い精度を1/100オーダーの処理時間で実現したことになる(当社実験)。
「EdgeQore(エッヂコア)」
マイクロコンピュータのラズベリーパイ上で稼働する「Qore」。
「EdgeQore」を用いることで、オンプレミスで、ディープラーニングでも実現不可能な「少量データによるリアルタイム解析」を、誰でも実現することができるようになった。
例えば、プライバシー保護が重視される用途や、インターネットに接続できない環境下での利用、高いレイテンシ(応答速度)を求められる用途など、これまで実現することができなかった幅広いケースに役立てることができる。
USE CASE
◆従来不可能だった個人データの活用
プライバシーなどの観点からクラウドにアップロードすることは難しく、また個人から取れるデータは少なすぎて高精度のモデルの作成は不可能だった。
- 心電図で疾患判定が93%の精度で可能 ※公開データによる不整脈判定テスト
- 音声での話者特定が99%の精度で可能 ※9人分の公開データによるテスト
- 振動での姿勢特定を98%の精度で可能 ※当社取組による24値分類テスト
◆環境に制約のある工業分野での活用
工業現場は必ずしもインターネットが活用できるわけではない。また異常値などのデータは少なすぎて高精度なモデルの作成は不可能だった。
- 異常検知
音での作業状態特定が94%の精度で可能 ※当社取組によるテスト - 作業工程の可視化
センサーでの作業特定が73%の精度で可能 ※当社取組によるテスト - ロボットアーム制御
センサーでの力学推定を高精度に予測可能(回帰) ※当社取組によるテスト
◆複雑すぎる時系列問題での活用
自然現象など複雑な問題に対して、限定的なセンサーや入力ソースで判別は困難。
- ニオイ検知
排泄のタイミングの特定が88%の精度で可能 ※当社取組によるテスト - モーション推定
骨格の動きで動作推定を91%の精度で可能 ※当社取組によるテスト - 住宅価格の予測
住宅価格の予想を高精度に予測可能(回帰) ※当社取組によるテスト
経営者プロフィール
代表取締役CEO 秋吉信吾
エキサイト株式会社にて複数のポータルサービスやNLP技術を使った新規サービスの開発、サーチエンジン導入プロジェクトなどを担当。 2014年にMistletoe株式会社にて深層学習を基礎とした音声認識、画像認識、機械翻訳、言語理解など人工知能(AI)関連の基盤技術開発に従事した後、2017年に株式会社デジタルガレージに入社、研究開発組織のDG LabでテクノロジーサイドからAI領域の投資先バリューアップおよび新規事業開発に携わる。2018年より多変量時系列解析向けに既存のRNNに代わるリアルタイム学習かつ高精度な新しいアルゴリズムを提供するQuantumCoreを設立。
取締役CTO(最高技術責任者) 長島壮洋
2001年に東京大学理学系研究科物理学専攻を修了後、ヤフー株式会社にてオークションのシステム開発を経験。2005年に株式会社カカクコムに入社し、食べログの開発責任者として立ち上げから参画。国内初の大規模システムへのRuby on Rails導入を成功させる。システム開発、運用から顧客対応、サイト運営全般と経験した後、食べログの米国展開をゼロから行う。2016年からは研究開発組織のDG Lab発足と同時にAI領域のCTOとして体制構築、プロジェクト推進を実施。
現在、弊社プロダクト開発の統括およびPoCを推進。
(同社Webサイト、同社Wantedlyおよび同社PR TIMES掲載情報を基に当社編集)