有機ELの次世代材料「TADF」、「Hyperfluorescence™」発光技術の開発で世界をリードする九州大学発ベンチャー
株式会社Kyulux
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会社概要・事業内容
会社概要
2015年3月設立の九州大学発ベンチャー。有機ELディスプレイや照明に用いる次世代発光材料・技術の開発に取り組み、日米両国で運営している成長企業である。
TADF、Hyperfluorescence発光体、ホスト材料に焦点を当て、有機ELディスプレイと照明パネル用の材料を開発している。
九州大学およびハーバード大学の人工知能(AI)を用いたディープラーニングシステムから得たライセンスをもとに、レアメタルに頼ることなく、コスト競争力に優れ、高効率、高純度の発色、さらに長寿命を実現する「TADF」「Hyperfluorescence™」発光技術を開発している。
「TADF」「Hyperfluorescence™」の二つの基本特許のライセンスを許諾された世界唯一のスタートアップとして、有機ELの未来に向け、TADF材料とHyperfluorescence™発光技術で世界をリードする。
事業内容
- 次世代有機EL発光材料の開発・製造・販売
テクノロジー
2012年に初めて開発されたTADF(Thermally Activated Delayed Fluorescence)発光体は、希少金属なしで100%IQEを達成し、有機ELの第3世代として注目を浴びている。TADF発光体は、2012年に九州大学の安達千波矢教授と彼の研究グループによって発明さた。
「TADF」とは?
有機ELディスプレイの発光層は、電荷の再結合が起こり、有機材料の発光が起こる最も重要な層だが、発光層は発光体とホストから構成され研究開発の主題となっている。
TADF分子は、一重項状態と三重項状態との間のエネルギーギャップ(⊿Est)が小さくなるように設計されているが、これにより励起状態エネルギー(三重項)から一重項へのアップコンバージョンを可能にし、一重項励起エネルギー状態から遅延蛍光として高効率な発光を実現することが可能。また、TADFは現行の有機EL発光体の次の3つの主な課題を解決することができる。
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- 低コストでレアメタルを使用しないTADF赤と緑の燐光発光体
- 効率的で長寿命な青色発光体
- インクジェット印刷に適した効率的で長寿命な発光体
「Hyperfluorescence™」とは?
有機ELディスプレイの発光層は、電荷の再結合が起こり、有機材料の発光が起こる最も重要な層である。発光層は発光体とホストから構成され、研究開発の主題となっている。
「Hyperfluorescence™」は第3世代の発光材料TADFと第1世代の蛍光材料の2つを組み合わせた第4世代の発光技術。TADF分子は一重項状態と三重項状態との間のエネルギーギャップ(⊿Est)が小さくなるように設計されているが、これにより、励起状態エネルギーの三重項から一重項へのアップコンバージョンが可能になり、一重項励起エネルギー状態から遅延蛍光として内部量子効率100%を実現することができる。
「Hyperfluorescence™」は発光層にホスト材料、TADF材料及び蛍光材料の3種類で構成されている。TADF分子は励起子を生成し、励起エネルギーが蛍光分子に移動し発光する。これにより、蛍光材料が自ら励起子を生成する場合に比べ4倍以上の高率で発光することが可能になる。これが「Hyperfluorescence™」と呼ばれる当社の発光技術である。「Hyperfluorescence™」はレアメタルを使用せず、高効率、高発色、高純度のすべてを可能にする革新的な発光メカニズムである。
沿革
- 2012年 九州大学 安達千波矢教授がTADF材料に関する画期的な論文を発表
- 2015年3月 Kyulux設立
- 2016年 シリーズA投資ラウンドにおいて15億円を調達
- 2016年 ハーバード大学の人工知能(AI)を用いたディープラーニングシステムの独占的ライセンスを取得
- 2017年 Nanocoと次世代ハイブリッドQD(量子ドット)有機ELの開発へ
- 2017年 Wisechipと共同でHF PMOLEDプロトタイプ展示ディスプレイの商品化に向けて評価開始
- 2018年 Hyperfluorescence™による青色有機ELの性能を飛躍的に向上
- 2019年 シリーズBで総額35億円の資金調達を完了
採択・受賞歴
- 2015年11月 ISIT20周年記念 九州先端科学技術研究開発「ナノテクノロジー賞」受賞
- 2016年11月 Red Herring「ワールドトップ100」受賞
- 2017年3月 リアルテックベンチャー・オブ・ザ・イヤー2017「スタートアップ部門」受賞
- 2017年3月 第2回「JEITAベンチャー賞2017」受賞
- 2018年6月 J-Startup企業に認定(J-Startup:経産省がリードするスタートアップ支援プログラム)
- 2018年8月 経済産業省「知財アクセラレーションプログラム(IPAS)」選定企業(特許庁のスタートアップベンチャー企業支援事業)
- 2018年10月 CEATEC AWARD 2018「デバイス/テクノロジー部門グランプリ」受賞
- 2019年5月 Japan-U.S. Innovation Awards Symposium「Innovation Showcase」受賞
- 2019年7月 大学発ベンチャー表彰2019「経済産業大臣賞」受賞
- 2019年10月 Red Herring Crowns 2019 Top 100 Asia 受賞
経営者プロフィール
代表取締役社長 安達淳治
大阪大学基礎工学部卒業後、松下電工株式会社入社。先端分野の研究開発成果の事業化に取り組んできた。94~96年米国MIT客員研究員として出向。帰国後燃料電池、有機太陽電池の開発に従事。2010年から九州大学で有機EL発光材料TADFの開発および実用化を推進。2015年株式会社Kyulux創設。
最高技術責任者 岡田久
富士フイルムの有機EL事業の企画立案、開発体制構築、材料商品化製造の推進リーダとして活躍。 $105M の特許ポートフォリオ構築をリード。Samsung Display、Samsung綜合技術院でシニアフェローとして活躍後、AIRIにて知財に従事。20年以上有機EL材料の研究開発から事業化まで携わった専門家。
Co-Founder and Scientific Advisor 安達千波矢
九州大学大学院総合理工学研究科 材料開発工学専攻博士課程修了(工学博士)。1991年に株式会社リコー入社。1996年、信州大学繊維学部機能高分子学科助手となり、1999年にプリンストン大学Center for Photonics and Optoelectronic Materials研究員。その後、千歳科学技術大学光科学部物質光科学科 助教授、教授を経て、2005年に九州大学未来化学創造センター教授、2010年に九州大学応用化学部門教授となる。2013年、JST ERATO 安達分子エキシトン工学プロジェクト研究総括。有機ELの材料開発で世界をリードしている。
(同社Webサイトを基に当社編集)