独自のがん細胞培養技術「スフェロイド」を用いて抗がん剤の効果判定等を行い、大腸がんの個別化医療を実現する
京ダイアグノスティクス株式会社
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会社概要・事業内容
会社概要
京都大学医学研究科の研究成果*を事業化するために設立された、京都大学発ベンチャー。日本国内で罹患者数が最も多い大腸がんに対し、一律的ではない個々の患者に合った投薬等 「個別化医療」を実現するために、次世代のがん診断関連製品・サービスを開発、提供している。
罹患者より摘出された大腸がん細胞を、独自技術を用いて高精度に培養。抗がん剤の効果判定や転移・再発可能性の検査を行い、治療戦略のための情報を前提とすることで患者が的確な治療を受けることが可能となるサービスを開発。
当社が開発を進めているのは、大腸がん患者「個人」のがん細胞に対してどの抗がん剤が有効かの検査を行う診断支援サービス(薬剤感受性試験)。一定のガイドラインではなく、個々人のがん細胞に対して、前もって薬剤感受性試験を行うことで、その患者に効果が少ない抗がん剤の使用を回避し、有効な抗がん剤を提案。
大腸がんに対する個別化医療を実現することにより、患者の身心への負担や医療費負担の軽減を目指す。
*H26~H28年度 科学技術振興機構(JST) 大学発新産業創出プログラム(START)
課題名:がん患者の予後を正確に予測する新規バイオマーカーを用いた病理診断技術
研究代表者:武藤誠(京都大学医学研究科)
事業プロモーターユニット:日本戦略投資株式会社
<当社の強み>
高精度な剤感受性検査を可能にする培養技術「スフェロイド」
- 培養技術を改良した独自のがん細胞培養技術「スフェロイド」を持っており、大腸がん患者より摘出したがん組織から純粋ながん細胞だけを培養する方法を確立。
- 京都大学と共同研究を重ね、スフェロイド培養にかかるコストの大幅削減と、培養したがん細胞の純度の向上に成功。(スフェロイドは特殊な技術や培養液を必要としていたことから、個人を対象とした医療サービスとして実用化することは難しい状態だった。)
- 独自のがん細胞培養技術を使うことで、患者から摘出したがん細胞を従来の約2.5倍の速さで培養することに成功。(培養に5ヶ月かかっていたものが2ヶ月で培養可能に。)
それゆえ、抗がん剤の有効性を判断する検査方法の1つであるPDSXの作製効率や検査精度が向上し、正確度の高い薬剤感受性検査が可能となった。
スフェロイド培養した「患者由来のがん細胞」を用いた生体検査「PDSX」
従来の移植方法であるPDX(摘出した組織をそのまま移植する方法)よりもスフェロイド培養したがん細胞は定着率が高く、短期間・高効率で試薬試験を行うことが可能。
生体での薬剤感受性検査を行うことでinvitro(試験管等で行う検査)での検査結果と併せて、より確度の高い検査結果を得ることができるようになった。
研究
大腸がん罹患数は国内13万5,800人(2015年)、世界約140万人とされており、大腸がん予後の薬剤応答性等の診断には、より簡便で精度の高い診断薬や診断法の開発が望まれている。
当社では京都大学医学研究科と連携し、遺伝薬理学ユニットの転移・浸潤機序研究および消化管外科個別化医療研究で開発された技術をベースに、大腸がん治療に貢献するがん診断関連製品・サービスを提供している。
- 大腸がん予後予測診断薬の研究
大腸がんにおけるTrioタンパク質リン酸化を指標とした浸潤・転移の予後予測診断薬の研究開発を実施。 - ヒト由来がん幹細胞スフェロイド細胞を用いたPDSXモデルによる研究
従来の大腸がんのPatient-derived xenograft (PDX)モデルと比べ、消化器系がん細胞をスフェロイド培養しマウスに移植した、Patient-Derived Spheroid Xenograft (PDSX)モデルでは生着率が高く、飼育期間が短いことを発見。PDSXでは細胞株由来ではなく、ヒト由来がん幹細胞スフェロイドを用いることで、大腸がん原発巣と類似の組織像(間質細胞のない)を確立し、高品質な薬剤感受性を示す。
製品・サポート
「Trio研究用製品」
- 大腸がん予後の薬剤応答性を予測
- 血行性転移を司るタンパク質”Trio”のリン酸化を判定可能なモノクローナル抗体試薬
「ヒト由来がん幹細胞スフェロイド細胞とPDSXモデルマウスによる試験サービス」
- 消化器系がん細胞をスフェロイド培養しマウスに移植した、Patient-Derived Spheroid Xenograft (PDSX)モデルを作成
- PDXと比べ、生着率が高い、飼育期間が短く、低コスト化と臨床応用が可能
- 京都大学医学研究科との提携で、細胞株由来ではなく、高品質な薬剤感受性を示すヒト由来がん幹細胞スフェロイド(150株以上)を利用
沿革
- 2014年7月 JST 研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム(START) 採択
- 2016年11月 京ダイアグノスティクス株式会社 設立
- 2017年1月 第1回 京都大学インキュベーションプログラム 採択
- 2017年6月 京都大学と独占的特許実施許諾契約を締結
- 2018年10月 株式会社トランスジェニックと業務提携契約を締結
経営者プロフィール
代表取締役社長 小西一豪
学位取得後、米国にて博士研究員として就労し、帰国後、外資系および内資系製薬会社にて、創薬化学者として医薬品の研究開発を10年以上行ってきた。その後、それらの知識と経験を活かし、外資系ベンチャーキャピタルにてシーズ技術の商業化とともに複数のライフサイエンスベンチャーを支援し、分析機器ソフトウェア会社の経営をしてきた。京都大学大学院修了、博士(薬学)
(同社Webサイトを基に当社編集)