制御性T細胞による新たな細胞医療と、iPS細胞技術を用いたキラーT細胞によるがん治療細胞医療の創出を目指す
レグセル株式会社
画像取得先: http://regcell.jp/
会社概要・事業内容
会社概要
世界的な免疫学研究者である、坂口志文教授(大阪大学名誉教授兼京都大学名誉教授)および河本宏教授(京都大学 ウイルス・再生医科学研究所教授)の技術をもとに、制御性T細胞*¹を用いた新たな細胞医療の創出、およびiPS細胞技術を利用したキラーT細胞*²によるがん治療細胞医療の創出を目指すベンチャー企業。
2016年1月の設立以来、京都大学との共同研究により基礎技術の開発を進めている。
制御性T細胞を医療に役立てることを目指し、株式会社iPSポータルと共同して「レグセル株式会社」を始動。その後、京都大学再生医科学研究所教授 河本宏氏の参画も得て、癌免疫細胞医療もターゲットに含めてより広く新たな医療を創出しようとしている。
CTOの坂口氏は、30年以上にわたり制御性T細胞の研究に従事し、制御性T細胞を用いた免疫病の治療、また癌免疫などの免疫反応制御について理解を深めた。いまや世界の多くの研究者が制御性T細胞の発生、機能の研究に参加し、実際の医療に応用しようとしている。
制御性T細胞は免疫抑制機能に特化したリンパ球であり、特定の抗原を認識する制御性T細胞の量的増加、抑制機能強化で、リウマチ等の自己免疫疾患の治療、アレルギーの緩和、移植臓器拒絶の抑制、骨髄移植に伴う移植片対宿主反応の抑制等々が可能である。また制御性T細胞の量的減少、抑制能の弱化を図り、がん細胞や病原微生物に対する免疫応答を強化できる。既に海外では制御性T細胞を利用した医療を進めるべく臨床試験が行われている。当社は、制御性T細胞を中心とした新しい医療を開発し、事業として継続的に患者に届けることを目指す。
さらに、人の命を奪う最大の難敵である癌に対しては、制御性T細胞を標的とした癌免疫の強化のみならず、癌細胞を攻撃するリンパ球の効率的作製法の開発を通じて新しい癌免疫療法の開発を目指す。そのひとつとして、iPS細胞技術を活用する新たな発想で、癌細胞を強力に攻撃する細胞傷害性T細胞を作製し、有効性の高い癌免疫医療を河本氏と共同して開発する。
当社は、免疫反応の抑制手法、増強手法の双方を手に、世界の人々の健康に寄与していく。
*¹ 制御性T細胞とは
免疫応答を抑制的に制御するT細胞の一種。過剰な免疫応答を抑制するためのブレーキ機能を果たしている。1980年代後半に坂口志文教授によって発見され、以後その機能解明がなされてきたもの。自己免疫疾患(リウマチ等)への新たな治療法、移植医療や再生医療に際しての新たな免疫拒絶反応抑制の方法として、その活用が注目されている。
*² キラーT細胞とは
通常、CLT(Cytotoxic T Lymphocyte;細胞傷害性T細胞)と呼ばれるT細胞の一種。体内の異物(ウイルス、がん細胞等)を攻撃して破壊するもの。異物と認識した細胞を殺傷するためキラー細胞とも呼ばれる。現在も患者本人のCLTを体外で増幅して再び身体に戻す自家CLT療法は行われているが、当社はストックされたiPS細胞を用いて利便性の高い医療として開発しようとしている。
事業内容
「制御性T細胞の活用による新たな医療」
1.自己免疫疾患領域
- リウマチ
自己免疫疾患の中で最も患者数の多いリウマチは、現在も数多くの医薬品が提供されているが、未だこれら既存治療法では寛解に至らない患者がいる。当社は制御性T細胞を体外で増殖・活性化した後に患者様に戻すという方法論にて、こうしたアンメットニーズに有効な治療方法の提供を目指す。制御性T細胞による治療は、リウマチにおける炎症惹起細胞の活性を抑えるという、病態の根源に働きかける方法だと考えられる。 - その他の自己免疫疾患
リウマチ以外にも様々な自己免疫疾患(例えば全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、全身性強皮症など)が知られているが、現状でまだまだ有効な治療薬が存在せず、ステロイド剤等による対処療法に依っているのが現状。当社はこうした自己免疫疾患に向けても制御性T細胞を利用した新たな医療の創生を進める。
2.臓器移植時・他家細胞再生医療に際しての免疫拒絶対応
臓器移植後の急性免疫拒絶については免疫抑制剤による対応方法が概ね確立されているが、慢性的な免疫拒絶やGVHDへの対応は未だ改善が望まれている。また今後他家iPS細胞を用いた再生医療も進むと思われるが、こうした場合も免疫拒絶対応の方法論が必要になる。当社は制御性T細胞の活用によって、こうした臓器移植や再生医療に対する免疫拒絶対応方法の提供を目指す。
「がん治療-細胞医療」
がん治療には様々な治療法が提案されているが、未だ死因の第1位を占める難治疾患であることに変わりない。昨今、免疫チェックポイント抗体医薬品が開発され、改めて人体に元々備わった免疫系によるがん医療が脚光を浴びている。細胞傷害性T細胞(CLT)や樹状細胞(DC)を体外で増強・活性化して再び患者様に戻すという自家免疫細胞療法は従来から行われてきている。これに対して当社はiPS技術を活用し、機能強化したCLT製剤を予め作製しておいて、それを患者に投与するという適時性と有効性に優れた新たな免疫細胞療法の創出を進める。
受賞歴等
2017年9月、国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による平成29年度「研究開発型べンチャー支援事業/シード期の研究開発型べンチャーに対する事業化支援」の事業に採択(事業名称「免疫細胞の人工的機能転換技術の開発」)。
同年10月、最高技術責任者・坂口志文氏および取締役・成宮周氏(京都大学名誉教授・特任教授)が文化功労者に選定。
2018年6月、経済産業省・NEDO・JETROによるスタートアップベンチャー集中支援プログラム「J-Startup」の対象企業に選定。
経営者プロフィール
CTO 坂口志文
大阪大学名誉教授兼京都大学名誉教授
代表取締役 坂口教子
(同社Webサイトを基に当社編集)